六花の庭

料理と少女をテーマに、描いたイラストを載せていきます。

あなたは魔法使いですか?

 最近ハーブティーにはまっています。
コーヒーがぶ飲みだったころに比べると、肌トラブルの解消には、はっきりと変化がありました。

そんな中、ふと一冊の本を思い出したので、ご紹介しようと思います。

有間カオルさんの、『魔法使いのハーブティー』という小説です。

 

 

主人公の勇希ちゃんは、母親を亡くしてから、親戚中をたらいまわしにされる生活をおくっています。
保護者である親戚からも疎まれているため、夏休みの間だけ、血のつながらない伯父の家に預けられることになりました。
生徒手帳にメモをした住所を手掛かりに、その伯父さんの家を訪ねてみると...そこにはハーブ畑が広がる大きな館があり、「魔法使いのハーブカフェ」というカフェがありました。
カフェを経営する伯父(については、終盤で秘密が明かされます)さんはちょっと変わり者で、勇希を預かる条件として、ある約束をさせます。その約束とは――
「魔女の後継者として、真摯に魔法の修行に励むこと」

と、あらすじを紹介するとファンタジーなのかと思われるかもしれませんが、この物語には呪文も、不思議な光も、架空の生物も出てきません。異能者どうしのバトルもありません。
魔法の「先生」であるはずの、ふにゃっとした優しい笑顔を見せる伯父さんが淹れてくれるハーブティーと、果樹やハーブの畑と、その夜空に浮かぶ、月の光があるだけです。
でも、この伯父である先生が、草食系でおとなしい感じなのですが、とっても素敵な人なのです!

勇希は魔女修行の一環として、ハーブについて学んだり、先生からもらった過去を記録するノートを描いたりしていく傍らで、カフェを訪ねてくる人々との出会いを通して、自分の望みや、居場所を見つけていきます。
カフェを訪れる人々は、深い喪失感を抱えていたり、家庭環境で苦しんでいたり、愛情表現が極端に下手だったりと、それぞれの問題を抱えていますが、先生の言葉と、ハーブのもてなしに触れて、少しずつ変化していきます。まるで、穏やかな魔法みたいに。


誰かの居場所になってしまうほどの存在感があったり、そういう空間を作れる人って素晴らしいと思う。
ハーブティーの物語の先生は、そういう人なのです。
その空間に居心地の良さを感じていた勇希も、やがて自分の人生に変化を起こす決意をします。

「魔法とは、意志に従って、意識の中に変化をもたらす業である」
作中にはダイアン・フォーチュンの言葉と思しき一文が出てきますが、勇希を変えたのはオカルトへの興味ではなくて、その言葉を教えてくれた先生から、日常で受けた愛情だと私は思います。
意志には、それを支えてくれるエネルギーとなるものが必要です。

魔法が使えても使えなくても、一人きりで成せる事は、とても少ないのです。


人は、生活している環境に心の居場所がないと感じたとき、そこから逃げ出したいと思います。
でも、帰る場所があれば、臆さず飛び出していける。

自分の居場所を持ち続けると同時に、誰かの居場所であり続けられる。それって、誰もが求める魔法なんじゃないでしょうか。